フリー介護士

介護の仕事を個人で受けると、年金は減りますか|60代から自分のペースで働くためのお金の話

考えながら外を見る女性 フリー介護士

「介護の仕事は続けたい。でも、フルタイムはもう体がもたない」

そう感じながら、辞めるか続けるかで止まっている方に向けて書きました。

 

時間を減らそうと考えたとき、次に出てくるのがお金の心配だと思います。

  • 働くと年金が減るのではないか
  • 減らされないように、収入を抑えたほうがいいのか
  • 個人で受けたら、そのぶん年金は止まるのか

先に結論をお伝えします。あなたの年金は、おそらく減りません。

そして2026年4月に、この制度は大きく変わりました。

「働くと年金が減る」と教わった時期の記憶のまま、動けなくなっている方がとても多いところです。

 

年金の心配を先に片づけて、そのうえで「時間をどう減らすか」を考えたほうが、話がずっと早く進みます。

ぜひ、最後までご覧ください。

本稿は、介護のお仕事をされている方に向けた記事です。ご家族の介護をされている方向けの内容ではありませんのでご注意ください。

第1章:「働くと年金が減る」は、会社員だけの話です

まず、この制度の名前を押さえてください。

在職老齢年金といいます。

働きながら老齢厚生年金を受け取るときに、年金の一部または全部が止まることがある、という仕組みです。

 

問題は、誰が対象なのかです。

日本年金機構の説明は、こうなっています。

70歳未満の方が会社に就職し厚生年金保険に加入した場合や、70歳以上の方が厚生年金保険の適用事業所にお勤めになった場合には、老齢厚生年金の額と給与や賞与の額(総報酬月額相当額)に応じて、年金の一部または全額が支給停止となる場合があります。

対象は「厚生年金保険に加入して働いている人」です。

この「厚生年金保険」というところで、いったん止まります。

厚生年金保険が何なのかが分からないと、自分が対象なのかどうかも分かりません。

 

日本の年金は、2階建てです

1階が国民年金です。

20歳から60歳までの人が、全員入ります。

 

2階が厚生年金保険です。

会社や事業所に勤めて働く人が、1階の上に乗せる形で入ります。

保険料は給与から天引きされ、半分を勤め先が出してくれます。

 

在職老齢年金で止まる可能性があるのは、2階部分、つまり厚生年金からもらう年金だけです。

1階の国民年金からもらう年金は、止まりません。

自分が厚生年金保険に入っているかどうかは、給与明細で分かります

制度の説明を読むより、給与明細を見るほうが早くて確実です。

 

給与明細に「厚生年金」という天引きがあれば、入っています。

「厚生年金」の天引きがなければ、入っていません。

 

「雇われていれば、全員入っている」ではありません。

たとえば、こういう働き方です。

  • 小さな事業所で、そもそも社会保険の対象になっていない
  • 勤務時間が短くて、加入の条件に届いていない
  • 単発の仕事や、短い期間の登録で働いている

こうした場合は、給与をもらっていても厚生年金保険には入っていないということがあります。

派遣で働く場合も、派遣会社や契約の内容によって変わります。

 

そして、厚生年金保険に入っていないことは、今回の話にかぎっては良い知らせです。

厚生年金保険に入っていない働き方なら、そもそも在職老齢年金の対象ではありません。

いくら働いても、年金は1円も止まりません。

 

ひとつだけ、70歳から見方が変わります

厚生年金保険への加入は、70歳で終わります。

そのため、70歳を過ぎると給与明細から「厚生年金」の天引きが消えます。

 

ですが、70歳を過ぎたからといって、在職老齢年金の対象から外れるわけではありません。

日本年金機構の説明にあるとおり、70歳以上の方が厚生年金保険の適用事業所にお勤めの場合は、天引きがなくても同じ計算をされます。

 

整理すると、こうなります。

  • 70歳未満 給与明細に「厚生年金」の天引きがあれば対象。なければ対象外
  • 70歳以上 天引きは消えるが、厚生年金保険のある職場に勤めていれば対象
  • 雇われずに、個人で仕事を受ける どちらの年齢でも対象外

勤め先の社会保険がどうなっているか分からないときは、給与明細を持って年金事務所で聞くのがいちばん確実です。

 

年金が減るかどうかは、いくら稼いだかではなく、雇われているかどうかで決まります。

雇われているかどうかで決まる。ここを説明している記事が、ほとんど見当たりません。

検索して出てくるのは、銀行や保険会社が会社員向けに書いた記事ばかりだと思います。

介護の現場で働く方に向けて、この話を書いたものが見当たりません。

介護保険の枠の外で働くという考え方の全体像は、こちらにまとめています

 

第2章:雇われていても、たいていは減りません

順番として、まず「雇われたまま時間を減らす」場合から見ます。

年金が減るかどうかは、たったひとつの式で決まります。

基本月額 + 総報酬月額相当額

言葉が硬いので、置き換えます。

  • 基本月額=あなたが受け取っている老齢厚生年金(報酬比例部分)の、1か月あたりの額
  • 総報酬月額相当額=毎月の給与に、1年間の賞与を12で割った額を足したもの

ひとことで言えば、年金の月額と、給与の月額です。

この年金と給与を足した金額が、ある基準額を超えたときだけ、年金が止まります。

 

年金が止まる基準額が、2026年4月に51万円から65万円になりました

令和7年年金制度改正法にもとづく変更です。

年金と給与の合計が65万円以下なら、年金は全額もらえます。

65万円を超えた場合も、年金が全部止まるわけではありません。

超えた分の半分だけ、年金が止まります。

 

日本年金機構が出している例で見てみます。

年金が月10万円、給与と賞与を合わせて月46万円の方。

改正前(51万円が基準)は、合計56万円で基準を超えるため、2万5千円が止まっていました。

改正後(65万円が基準)は、合計56万円なので基準を超えません。年金は10万円が全額支給されます。

 

ここで、ご自分の年金額と給与を当てはめてみてください。

年金と給与を足して、月65万円を超えているでしょうか。

介護の現場でフルタイムのまま働いている方でも、この金額に届く方はほとんどいらっしゃらないはずです。

まして、体力を考えて時間を減らそうとしている方なら、まず超えません。

 

もうひとつ、老齢基礎年金は最初から対象外です

在職老齢年金で止まる可能性があるのは、老齢厚生年金(報酬比例部分)だけです。

老齢基礎年金は、どれだけ働いても、調整の対象になりません。

日本年金機構の説明にも「老齢基礎年金および経過的加算額は全額支給となります」と明記されています。

 

つまり「働くと年金が減るから、収入を抑えなければ」という前提そのものが、多くの方には当てはまりません。

「働くと年金が減る」という心配は、まず机の上から下ろしてください。

 

第3章:個人で受けると、計算そのものから外れます

次に、雇われずに個人で仕事を受ける場合です。

個人で仕事を受ける場合は、話がもっと単純になります。

 

個人事業主は、厚生年金保険の被保険者ではありません。

第1章で見たとおり、在職老齢年金の対象は「厚生年金保険に加入して働いている人」でした。

雇われていないので、個人事業主は最初から対象になりません。

事業で受け取ったお金は、給与でも賞与でもありません。

ですから、いくら受け取っても、65万円の計算には足されません。

 

年金をたくさん納めてこられた方も、同じです

ここで、こう思われた方がいるかもしれません。

私は現役のころ給与が高くて、年金も多いほうだ。それでも本当に大丈夫なのか

大丈夫です。足し算の相手が、いないからです。

年金が止まるかどうかは「年金 + 給与」で判断します。

雇われていなければ、給与はゼロです。

足す相手がいないので、合計は年金の額そのものになります。

そして老齢厚生年金だけで月65万円を超えることは、いまの制度ではまず起こりません。

ご自分の年金額は、ねんきん定期便かねんきんネットで確認できます。

 

月に10万円受け取っても、月に30万円受け取っても、答えは同じです。

事業で受け取ったお金は、年金の計算に足されません。

 

ただし、勤めを続けながら個人でも仕事を受ける場合は、給与の分だけが計算に入ります。

その場合も、個人で受けた分は足されません。

 

雇われている場合と、個人で受ける場合の違い

  • 雇われている場合 ── 65万円という基準が、一応は存在する
  • 個人で受ける場合 ── 基準そのものが関係ない

基準額は毎年度、賃金の変動に応じて改定されます。

制度が将来また変わったとしても、個人で受けている分については、その影響を受けません。

 

ただし、都合のいい話ばかりではありません

公平に書いておきます。

個人事業主には、厚生年金がありません。

会社勤めを続けていれば、そのぶん将来の老齢厚生年金は増えていきます。

個人で受けている期間は、老齢厚生年金が増えません。

 

健康保険も、国民健康保険に切り替わります。

会社が半分払っていた保険料を、全額自分で払うことになります。

 

それでも、すでに年金を受け取り始めている年代の方にとっては、老齢厚生年金が増えないことの影響は小さくなります。

これから何十年も厚生年金を積む話ではないからです。

60代以降にかぎっては、「雇われ続けることの金銭的な利点」は、思っているより小さくなります。

 

第4章:本当の問題は、年金ではありませんでした

ここまでで、年金の心配は片づきました。

そうすると、残った問題がはっきりします。

 

フルタイムが続けられない、ということです。

夜勤がこたえる。

移乗で腰にくる。

朝が起きられない。

介護の仕事が嫌いになったわけではないのに、体のほうが先に音を上げる。

 

この状態で、多くの方が2つのうちどちらかを選ばれます。

  • 辞める
  • パートに落として、同じ職場で時間を減らす

辞めるか、パートに落とすか。この2つのほかに、3つ目があります。

3つ目をお話しする前に、パートに落とすと何が起きるかを見ておきます。

 

第5章:時間を半分にすると、収入も半分になります

雇われている限り、収入は「時給 × 時間」で決まります。

時給は、あなたが決めるものではありません。

 

週5日で働いていた方が、週2日に減らしたとします。

働く時間は5分の2になり、収入も5分の2になります。

体は楽になりますが、生活はきつくなります。

 

だから多くの方が、体がきついまま日数を戻します。

そしてまた限界が来て、今度は辞めることを考える。

この往復が、何年も続きます。

 

問題は時間ではなく、1時間あたりの金額を自分で決められないことでした。

 

第6章:単価を決める側に立つと、話が変わります

介護保険の外で提供される自費のサービスは、料金を事業者が自由に決めています。

介護報酬のような公定価格がないためです。

 

参考までに、自費の訪問介護を提供している事業者の公表料金を見てみます。

クラウドケアは、1時間2,750円からと公表しています。

これは事業者としての価格で、そのまま個人の取り分になるわけではありません。

ただ、介護保険の枠の外では、こういう水準で値段がついているという事実は押さえておいてください。

 

時間を減らしても、単価が変われば、収入は比例して減りません。

時間を減らしても収入が比例して減らない。ここが、パートに落とすことと、個人で受けることの決定的な違いです。

 

誤解のないように書いておきます

「高く売れ」という話ではありません。

金額を決める権利が自分の側にある、という話です。

安くする自由も、同じように自分の側にあります。

 

実際に始めた方の多くは、最初はかなり控えめな金額から始めています。

大事なのは、その金額をご自分で決めたという点です。

 

個人で始めるときに、実際に何が要って何が要らないのかは、こちらの記事にまとめています

交通費やガソリン代のように、金額を自分で決めることになる項目については、こちらをご覧ください

フリー介護士7日間メール講座

第7章:実際に、その順番で動かれた方がいます

60代後半の女性の方の話をします。

介護のご経験は3年ほど。

ショートステイから特別養護老人ホームまで一通り経験され、いちばん長かったのがデイサービスでした。

 

その方が、体力的にきつくなってきて、辞めなければならないかと考えられました。

そのときに出てきたのが、こういう言葉です。

私のできることで、もっと高齢者の方と関わっていきたい

 

辞めるか続けるかではなく、高齢者と関わる仕事を続けるために、フリーランスの道を選ばれました。

いまはいくつかの仕事をフリーで受けておられます。

そのうちのひとつが、レンタルスペースを借りて開いている、簡単な体操教室です。

 

金額を決めるときには、ずいぶん悩まれたそうです。

静岡県の地方ということもあり、部屋を小さくして、人数も絞って、お一人1回800円にされました。

参加しやすい金額だったようで、いまも続いています。

 

体操教室のほかにも、こういう仕事を受けておられます。

  • 施設でのレクリエーションを請け負う
  • 地元のケアマネジャーから連絡が来たときに対応する
  • 視覚障害のある方の外出に同行する

どれも、無理のない範囲です。

 

800円は、決して高い金額ではありません。それでも、その800円はご自分で決めた金額です。

雇われている限り、値段を決める場面は一生回ってきません。

 

第8章:では、明日からできること

順番に並べます。

 

1. ご自分の基本月額を確認する

ねんきん定期便か、ねんきんネットで見られます。

老齢厚生年金(報酬比例部分)の年額を12で割った数字です。

 

2. いまの給与を足して、65万円と比べる

ほとんどの方は、65万円を大きく下回るはずです。

下回っていれば、収入を抑える理由はありません。

 

3. 「時間を減らす」と「単価を決める」を分けて考える

体力の問題は、時間を減らして解決します。

収入の問題は、単価で解決します。

体力の問題と収入の問題。この2つを混ぜたまま考えるので、辞めるか続けるかの二択になってしまいます。

 

4. 自分が「できること」を、介護技術の外まで広げて書き出す

第7章の方は、介助ではなく体操教室でした。

高齢の方と関わる仕事は、身体介護だけではありません。

 

第9章:まとめ

  • 在職老齢年金の対象は厚生年金保険に加入して働く人給与明細に「厚生年金」の天引きがあるかどうかで分かります(70歳以上は天引きが消えても対象)
  • 2026年4月から、基準額は月51万円から65万円に引き上げられました
  • 年金と給与の合計が65万円以下なら全額支給。介護の現場で働く方は、まず超えません
  • 老齢基礎年金は、そもそも調整の対象外です
  • 個人で受ける場合は厚生年金の被保険者ではないため、事業で受け取ったお金は計算に足されません。年金が多い方でも同じです
  • ただし個人事業主には厚生年金がなく、健康保険も全額自己負担になります
  • 本当の問題は年金ではなく体力でした。体力の問題は時間を減らして解決し、収入の問題は単価で解決します

 

介護が嫌いになったわけではないのに辞めてしまうのは、もったいないと思っています。

減らすのは時間で、手放すのは仕事ではありません。

 

働き方を具体的にどう変えていくかは、7日間のメール講座で順を追ってお伝えしています。

 


出典

この記事は2026年8月時点の情報にもとづく一般的な内容です。在職老齢年金の基準額は毎年度、賃金の変動に応じて改定されます。ご自身の年金額や支給停止の有無は、ねんきんネットまたはお近くの年金事務所でご確認ください。健康保険・国民年金の取り扱いはお住まいの市区町村により異なる場合があります。記事中の料金は各事業者が公表しているもので、地域やサービス内容により異なります。記事中の事例は、ご本人の了解を得たうえで、氏名を出さない形で記載しています。

 

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