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訪問介護の買い物代行、お金は立て替えていい?個人で仕事を受けるときの決め方

フリー介護士が利用者からお金を預かる フリー介護士

「ついでにこれも買ってきてもらえない?」

訪問先でそう言われたとき、財布を出していいのかどうか。
事業所に所属していたころは、たいてい社内規定で決まっていました。
「ヘルパーの立て替えは禁止」と書かれていた方も多いと思います。

ところが個人で仕事を受けるようになると、その規定がありません。
禁止してくれる人がいない代わりに、守ってくれる人もいない。
自分で決めるしかなくなります。

この記事は、そこをどう決めるかの話です。

1. 結論:自分の財布から出さない。先に預かる

いきなり結論から書きます。

買い物代行の代金は、自分で立て替えず、出かける前に利用者から預かってください。

立て替えが法律で禁じられているわけではありません。
やろうと思えばできます。

それでも勧めないのは、トラブルになったときに、あなたを守るものが何もないからです。

訪問介護の現場では、この判断はすでに固まっています。

事業所向けの解説では「ヘルパーの財布から立て替えることは避けましょう」とされ、掲示板では「社内規定で禁止されています」という声が並びます。

自費サービスの事業者も「必ず事前に利用者から預かる形にします」と書いています。

業界の常識としては、とっくに答えが出ているわけです。

問題は、その常識が「事業所がヘルパーに守らせるもの」として語られていて、個人で受ける人に向けて書かれていないことです。

2. なぜ立て替えると危ないのか

理由は3つあります。

お金の記憶は、あとから食い違う

「渡したはず」「もらっていない」は、どちらかが嘘をついていなくても起こります。
認知症のある方なら、なおさらです。
数時間後には本当に忘れておられます。

このとき事業所にいれば、事業所が間に入ります。
個人で受けていれば、あなたと相手の一対一です。
証明する手段を先に用意しておかないと、誠実にやっていたほうが疑われます。

金額が膨らんだときに戻ってこない

数百円なら笑い話ですが、金額が上がると話が変わります。
「今月まとめて」と言われて、そのまま曖昧になったとき、あなたには請求する後ろ盾がありません。

関係そのものが壊れる

これが一番大きいところです。
お金でもめると、仕事が続けられなくなります。

失うのは立て替えた金額ではなく、その方との関係と、その先の仕事です。

3. 実際の手順

難しいことはしません。この順番を毎回守るだけです。

  1. 出かける前に、金額を一緒に確認して預かる。「では5,000円お預かりします」と声に出す
  2. その場でメモに残す。日付・預かった額・自分の名前。連絡ノートがあればそこに書く
  3. 買い物をする
  4. レシートとお釣りを一緒に返す。レシートだけ、お釣りだけ、を避ける
  5. 返した記録も残す。使った額とお釣りの額をメモに書き足す

ご家族が離れて暮らしている場合は、メモを写真に撮って送っておくと、後から説明する手間がなくなります。

クレジットカードは使わない

利用者のカードを預かって使うのは、避けてください。
本人以外の使用はカード会社の規約で禁じられています。

親切のつもりでも、規約違反に加担する形になります。

足りなかったときの決め方も、先に

「5,000円預かったが、5,300円だった」は普通に起きます。
そのとき300円をどうするかを、先に決めておいてください。

「次回精算」でも「その場でいただく」でも構いません。
決まっていないことが問題になります。

4. 高額なものを頼まれたとき

ここからは、既存の解説がほとんど触れていない部分です。

買い物代行の説明は、たいてい「食料品・日用品」を前提にしています。
しかし個人で仕事を受けていると、桁の違う依頼が来ます。

テレビを選んで買ってきてほしい、と言われた例

フリーとして最初の仕事で、こんな依頼を受けた方がいます(三浦さん・仮名)。

ご本人が見られるテレビとテレビスタンドを選んで、買ってきてほしい

三浦さんが最初に思ったのは、こういう疑問でした。

それって大丈夫なんですかね? 買い物代行みたいな感じになるのかな

やること自体は問題ありません。
介護保険のサービスではないので、保険の範囲かどうかを気にする必要もありません。

困っている方の役に立つのですから、特別な名前を付ける必要もない仕事です。

迷いの本体は、そこではありませんでした。
いくら請求すればいいか分からない、ということでした。

料金は「かかった時間 × 時給」で考える

基本はこれで構いません。
買いに行った時間、選ぶために調べた時間を、時給で計算します。

ただし、調べる時間は人によって桁が違います。

  • AIに一言聞いて、30秒で候補が出てくることもある
  • 電気屋を10軒まわって、メモを取ってくることもある

同じ「調べました」でも、中身がまるで違います。
そして相手には、どちらだったのかが見えません。

だから、書面にして渡す

ここが肝心です。

調べた内容を紙にして渡してください。
「私はこう調べました」が形になっていれば、相手は納得できます。

候補を3つ挙げて、値段と特徴を書き、「これでいかがでしょうか」と示す。
それだけで十分です。

逆に、何も示さないまま「では何万円です」と請求するのが、一番危ないやり方です。
相手にはあなたが何をしたのか見えていません。
悪気がなくても、高いと感じられます。

そこで関係が崩れるのが、一番怖いことです。

お金をいただくのであれば、しっかりとした形にしておく。
それが自分を守ります。

高額品の代金そのものは、預かるか、本人に払ってもらう

テレビのような金額を立て替えるのは、現実的ではありません。
次のどれかにしてください。

  • 先に代金を預かる(金額を一緒に確認して、必ず記録を残す)
  • 店で本人・ご家族に支払っていただく(通販なら本人名義で注文する)
  • ご家族に同席していただく

どれを選ぶにしても、あなたの財布からは出さないという点は変わりません。

訪問介護のヘルパーに買い物代行を頼む高齢の女性

フリー介護士にお買い物を頼む女性

5. 預かったお金・立て替えたお金は、売上ではありません

ここは個人事業主になった方が必ずつまずくところです。

利用者から預かって支払った代金や、交通費・駐車場代のような実費は、あなたの売上ではありません。
お金があなたの手を通っただけです。

これを売上に入れてしまうと、実際には手元に残っていないお金にまで税金がかかります。
売上が大きく見えるだけで、得はひとつもありません。

やってはいけない請求のしかた

国税庁の資料では、立替金は本来、消費税の課税対象外として扱われます。
ただし例外があります。

請求のしかた どうなるか
報酬と実費を分けて書く 実費部分は課税対象外
報酬に実費を混ぜてひとつの金額にする 全額が課税売上になる
立替分に手数料を上乗せして請求する 全額が課税売上になる

つまり請求書は、「サービス料◯◯円」と「お立替分◯◯円」を必ず分けて書くということです。ひとつの金額にまとめた瞬間に、全部が売上になります。

レシートの宛名にも注意

領収書の宛名があなたの名前になっていると、立替として認められにくくなります。
宛名は利用者の名前でもらってください。

スーパーのレシートのように宛名がないものは、日付と品目が分かるので問題ありません。

詳しくは国税庁のインボイス制度Q&A(立替金)立替金精算書の資料をご覧ください。
金額が大きくなる方は、一度税理士に確認しておくと安心です。

6. 断ってよい場面

全部を引き受ける必要はありません。
次の依頼は、はっきり断って構いません。

  • 通帳・キャッシュカード・印鑑を預かってほしい
    買い物代行とは別の話です。財産管理や後見という制度の枠組みが必要になります(利用者のお金をどこまで預かってよいかで、現金と通帳の線引きを整理しています)
  • クレジットカードを使ってほしい。規約違反になります
  • 金額を決めずに「適当に見繕って」。上限を決めてもらってから受けます
  • 公共料金の支払いや、預金の引き出し。買い物とは性質が違います

断るときは、あなたの都合ではなく相手を守る話として伝えると、角が立ちません。

「もし何かあったときに、私がお預かりしていると、かえってご迷惑をおかけしてしまうので」という言い方です。

なお介護保険の訪問介護では、買い物の範囲そのものにも決まりがあります(老計第10号/平成12年3月17日の通知)。
日常生活に必要な食料品・日用品に限られ、嗜好品や来客用のものは対象外です。

自費サービスの介護保険外で個人として受ける場合、この制限はかかりませんが、「事業所ではここまでだった」という基準として知っておくと、線を引くときの助けになります。

7. まとめ

  • 自分の財布からは出さない。出かける前に預かる
  • 金額を声に出して確認し、メモに残す。レシートとお釣りは一緒に返す
  • 足りなかったときの扱いを先に決めておく
  • 高額なものは調べた内容を書面にして渡す。何も示さない請求が一番危ない
  • 預かったお金と実費は売上ではない。請求書で報酬と分けて書く
  • 通帳・カード・印鑑は別の話。断ってよい

個人で仕事を受けるということは、社内規定という後ろ盾がなくなるということです。

だからこそ、自分でルールを決めて、それを毎回同じようにやる。

それが結局、いちばん相手に信頼される形になります。
この記事は「自分のお金を出す側」の話でした。
逆に「利用者のお金を持つ側」——現金をいくらまで預かってよいのか、通帳を頼まれたらどうするのかは、訪問介護で利用者のお金を預かるときにまとめています。

 

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出典

この記事は2026年8月時点の情報にもとづく一般的な内容です。税務の取り扱いは状況によって異なります。個別の判断が必要な場合は税理士等の専門家にご相談ください。記事中の「三浦さん」は仮名です。

 

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