フリー介護士

ヘルパーの交通費・ガソリン代は請求していい|個人で仕事を受けるときの決め方と書き方

フリー介護士

「自分の車で行っているのに、ガソリン代が出ない」 訪問の仕事をしていると、必ず一度は思うところです。 掲示板を見ると、事業所の扱いはだいたいこうなっています。

  • 買い物支援でヘルパーの自家用車を使って、1kmあたり10円
  • ガソリン代は半分以下しか支給されない。車が消耗する分は自己負担

金額の話をしても、返ってくるのは「規程がこうなっているので」です。

ところが個人で介護の仕事を受けるようになると、この話はまるごと裏返ります。
決めるのが、自分になるからです。

そして今度は、別の迷いが出てきます。「交通費をもらったら、白タクになるのでは」という迷いです。

大阪の南部で活動している中西さん(仮名)も、初めての仕事を終えた直後に、同じところで止まりました。ご自分で料金計算表を作っておられた方です。

基本料金と交通費を書く欄があり、割引や追加料金も記入できるようにしてある。準備のいい方です。

それでも、こう迷われました。

私が残す書類に、交通費とは書いておかないほうがいいのかな、と思ったんですけど……

書いてよいのか分からないので、書類に残すこと自体をためらっている。

結論から言うと、心配の必要はありません。
国土交通省の通達に、あなたの仕事がそのまま書かれています。

1. 結論:請求してよい。国の通達に書いてある

根拠になるのは、国土交通省の「道路運送法における許可又は登録を要しない運送に関するガイドライン」です。

令和6年3月1日に出され、令和8年6月5日から改正版が適用されています。
この中に、許可も登録も要らない運送の例として、こう書かれています。

通院や買物等に同行する支援、子供の送り届けなどが含まれる「子供の見守り支援」など、提供するサービスに人の運送が付随して行われるものについては、当該サービス自体が有料であったとしても、当該運送に特定した反対給付がない限り、許可又は登録は不要である。

「通院や買物等に同行する支援」。あなたの仕事そのものです。
そして「サービス自体が有料であっても構わない」と、はっきり書かれています。

つまり、通院の付き添いで報酬をいただくこと自体は、まったく問題がありません。

 

実費として受け取ってよいもの

同じ通達に、実費の中身が列挙されています。

「実費」とは、運送(前後の回送を含む。)に必要なガソリン等の燃料代、道路通行料、駐車場料金、保険料、当該運送を行うために発生した車両借料(レンタカー代)をいう。

注目していただきたいのは「前後の回送を含む」という一言です。

回送とは、誰も乗せていない移動のことです。
自宅から利用者宅へ向かう分。仕事が終わって自宅へ帰る分。

これが実費に含まれると、通達に明記されています。

迎えに行くガソリン代を請求してよいのか——迷う必要のないところでした。

 

ただし、保険料には注意

実費に「保険料」とありますが、これは範囲が限られています。

対象になるのは、ボランティア団体・NPO等の無償運送向けに提供されている保険や、レンタカーを借りるときの一時的な補償です。

あなたの車にもともと掛けている自賠責保険・任意保険は、対象外とはっきり書かれています。

「車の維持費も実費に入る」という説明を見かけることがありますが、それは施設の送迎バスのように、送迎のためだけに車を持っている場合の話です。
自分の生活にも使っている車では、そこまで含められません。

2. 線が引かれるのは「移動そのものを売っているか」

では、何がだめなのか。

通達が繰り返し使っているのは、「当該運送に特定した反対給付」という言い方です。

かみ砕くと、移動それ自体に値段が付いているかどうかということです。
そして、こう釘が刺されています。

生活支援サービスと称していても、提供されるサービスの実態が目的地への運送のみである場合には、許可又は登録を要する。

看板の問題ではなく、中身の問題だということです。

「付き添いサービス」と名乗っていても、実際にやっているのが送り迎えだけなら、それは運送業です。許可が要ります。

逆に、通院に付き添って、院内で待って、話を聞いて、帰りに買い物をする。
その中に移動が含まれているのであれば、通達が言う「付随して生じる運送」にあたります。

老人ホームの立て付けも、実は同じです。
送迎そのものは無料で、施設に入ってからのサービスが有料。
あの形には理由があります。

だから、料金表に「送迎料」という行は作らない

ここが実務上の結論です。

料金表に「送迎料 ◯◯円」と書かないでください。 

書いた瞬間に、移動に値段が付きます。
せっかく「付随して生じる運送」の側にいたのに、わざわざ運送を商品にしてしまうことになります。

書かなければよいだけの話です。
実費としてのガソリン代は、それとは別に堂々と受け取れます。

なお、謝礼として受け取る形もありますが、こちらには条件があります。

通達は「運送を提供する者が運賃表を定めてそれに従って利用者が金銭を支払う場合」は謝礼と認めない、としています。

実費のルートで受け取るほうが、はるかにすっきりします。

送迎そのものをどこまでやってよいのかは、自家用車で利用者を送迎すると白タクになるのかで詳しく書いています。
この記事では、お金の決め方と書き方を扱います。

最終的な判断は運輸支局が行う

ひとつだけ添えておきます。

通達自身が、「最終的には、それぞれの事案に則して個別に総合的な判断を行うことが必要」と書いています。

ガイドラインは考え方を示したもので、あなたの案件を保証するものではありません。
特殊な形で受けるときは、管轄の運輸支局に一度電話しておくと確実です。

ただし、「全部の許可を取ってから始めよう」と考えると、仕事は永久に始まりません。
移動を商品にしない形さえ作っておけば、あとは仕事に集中して構いません。

 

3. いくらにするか。計算式も通達に書いてある

これも自分で考える必要はありません。通達に計算方法が載っています。

走行距離(㎞)÷燃費(㎞/ℓ)×1ℓあたりのガソリン価格(円/ℓ)

そのままです。走った距離を燃費で割って、ガソリン単価を掛ける。
たとえば往復20km、燃費15km/ℓ、ガソリン175円/ℓなら、20 ÷ 15 × 175 でおよそ233円です。

「1kmあたり◯円」で決めてよい、とも書いてある

毎回この計算をするのは大変です。通達はそこにも触れています。

運送行為が頻繁に行われる場合に、一定の期間において「1㎞あたり○円」などと定めて概算することも、簡易な方法として容認できる。

1kmあたりいくら、と自分で決めてよいということです。

ここで冒頭の話に戻ります。事業所の相場は1km10円でした。
上の式で計算してみてください。

燃費15km/ℓ、ガソリン175円/ℓなら、1kmあたり約11.7円です。
燃費が10km/ℓの車なら17.5円になります。

1km10円は、ガソリン代にすら届いていない金額だったということです。
10〜15円あたりから考えて構いません。

根拠のある数字を自分で持てるようになったのが、事業所にいたころとの一番の違いです。

大事なのは金額そのものより、先に伝えてあることです。
「片道◯kmなので、往復で◯円いただきます」と最初に言ってあれば、あとで揉めません。

 

移動時間は、時給の側で見る

ここは見落とされがちです。

移動そのものの代金は取らない。
それでもあなたはその時間、働いています。
朝、家を出てから戻るまで、時間はずっと動いています。

移動料金としては取らないけれど、拘束されている(サービス提供)時間として、計算に入れておく。

これは矛盾しません。

「60分で交通費別、◯円」という形で受けている方もいます。
時間と実費を分けて示す、分かりやすいやり方です。

 

1日単位でまとめる

実務で一番きれいなのは、この形です。
その日、家を出てから帰るまでに何km走ったか。それを合計して計算する。
自宅 → 利用者宅 → 病院 → 利用者宅 → 自宅
この全部を1本の移動として見ます。

「誰かを乗せていた区間」と「乗せていない区間」を分けて書く必要はありません。

通達が「前後の回送を含む」としているのは、まさにこの形を想定しているからです。

分けて書こうとするから、「乗せていた分の料金=送迎料」という形が生まれてしまいます。

 

4. もらい方で、税金が変わる

ここは通達ではなく、税金の話です。
同じガソリン代でも、誰が払うかによって、あなたの売上に入るかどうかが変わります。

もらい方 あなたの売上
ご本人・ご家族がその場で直接払う
(給油時に本人が支払う/預かったお金で払う)
売上にならない
あなたが立て替えて、あとで「交通費」として請求する 売上に入る

一泊の付き添いや遠出の同行では、ここが効いてきます。

ガソリン代を2回、3回入れる。食事も一緒にとる。
その全部を自分がいったん払って、あとで請求書に載せると、売上が実際より大きく膨らみます。

手元に残っていないお金にまで税金がかかる、ということです。

年に何度も受けるようになると、差は小さくありません。
純粋に自分がもらう分だけを売上にする。これが基本の形です。

 

だから、契約のときにこう書いておく

遠出や泊まりの仕事を受けるときは、書面にこの一行を入れておきます。

ガソリン代・高速代・食事代などは実費のご負担でお願いします。
同行中の私の分についても、同等のものをお願いします。

これで、実費はあなたの財布を通りません。
経費と売上が最初から分かれます。

「これは経費であって私の売上ではありません」と説明できる形にしておくと、あとから税務署に聞かれたときにも困りません。

利用者のお金を預かって支払う形にする場合は、預かり方そのものに手順が要ります。
訪問介護で利用者のお金を預かるときにまとめています。

 

5. 請求書と領収書は、分けて考える

「交通費は領収書から抜いたほうがいいのでしょうか」
これはよく出てくる質問です。

答えは、見る人が違うので、書き方も変わるということです。

 

相手にお渡しする領収書

細かく分ける必要はありません。
「訪問サービス(交通費込み) ◯◯円」で構いません。

1日いくら、半日いくら、という形でも問題ありません。

相手は内訳を見ていないからです。

ガソリンがいくらで、サービスがいくらで、という分解を求めている方はほとんどいません。
見ているのは、合計金額です。

大事なのは、相手が納得しているかどうかだけです。
最初に説明してあって、その通りの金額なら、それで足ります。

 

自分の帳簿と、請求書の中身

こちらは分けます。
報酬と実費を混ぜてひとつの金額にしてしまうと、税務の扱いが変わってしまうことがあります。

特に、利用者に代わって支払った買い物代金のような「立替金」は、分けて書くかどうかで扱いが変わります。

このあたりは訪問介護で買い物を立て替えていいのかで、国税庁の資料を挙げて整理しました。

フリー介護士で収入が大きくなってきた方は、そちらもご覧ください。

 

6. 迷ったら、書面にして渡す

交通費に限らず、お金の話はここに戻ります。

気になることは、口頭で済ませずに書面にして渡し、サインをいただく。

書くことは、以下のことだけで足ります。

  1. 基本料金(時間あたり、または1回あたり)
  2. 交通費の計算方法(1kmあたり◯円、または1回◯円)
  3. 実費の扱い(駐車場代・高速代・食事代を誰が払うか)
  4. 追加が発生する場合(時間が延びたとき、遠方になったとき)

料金計算表のような形で、1枚にまとめておくといちばん楽です。
毎回同じ紙を使えば、説明も一定になります。

冒頭の中西さんは、この計算表をすでに作っておられました。

迷っていたのは、そこに交通費と書いてよいのかどうかだけでした。

答えは、書いてください、です。

交通費を書いたら怪しまれるのではないか、と心配する必要はありません。

逆です。
書いていないほうが、あとで「聞いていない」と言われます。

はっきり書いて、先に渡す。
それが一番きれいな形です。

7. 同行中の食事代・お茶代は、誰が払うのか

ひとつ前の章で、書面に書くことの3つ目に「実費の扱い(駐車場代・高速代・食事代を誰が払うか)」と挙げました。

では、食事代は誰が払うのでしょうか。

外出に付き添って、お昼をまたいだ。
通院の待ち時間が長くて、喫茶店に入った。

そのとき、あなたの分は誰が払うのか。

全額、お客様にご負担いただいてください。

食事代も、お茶代も、同じです。

 

事業所にいたときと、逆になります

ここで戸惑う方が多いと思います。

公費のサービスでは、答えが逆だからです。

同行援護や移動支援の手引きには、自治体によって「ヘルパーの食事代はヘルパーが負担する」と書かれています。

事業所で働いてこられた方は、自分の昼食は自分で払うのが当たり前だったはずです。

だから、個人で受けるようになっても、つい自分で払ってしまう。

 

なぜ逆になるのか

立場が違うからです。

事業所にいたときは、あなたは給料をもらって業務として行っていました。
お昼ご飯は、会社からの給料を使って、お弁当を作ったり、買ったりしています。

しかし、個人で仕事を受けるようになると、あなたが事業主となり、全く違う考え方になります。

同行中に発生した食事代は、その仕事のために発生した費用です。
必要経費として、お客様に請求するのが基本的な考え方になります。

あなたが会社員の感覚で自分で払えば、その分だけ手取りが減ります。
1回1,000円でも、月に10回あれば1万円です。

 

遠慮しなくて大丈夫です

「言い出しにくい」と思われるかもしれません。

けれど、これは特別なお願いではありません。

保険外の付き添いサービスを事業として行っている会社は、料金ページに普通にそう書いています。

同行するスタッフの費用は、お客様のご負担となります

業界の常識のほうです。

 

交通費と違って、堂々と項目にしてください

この記事では、「送迎料」という行は作らないとお伝えしました。
移動そのものを売っていると見られると、道路運送法の話になるからです。

食事代には、その問題がありません。

法律が何かを禁じているわけではないので、書いて構いません。
むしろ、書いてください。

 

その場で言わない。先に決めておく

いちばん大事なのはここです。

お店に入ってから「私の分もお願いします」とは、言いにくいものです。
言えないまま自分で払って、それが2回、3回と続いていきます。

だから、契約の紙に先に書いておきます。

外出に同行する際、スタッフ分の食事代・飲み物代は、お客様のご負担となります

一行で足ります。

先に書いてあれば、その場で何も言わなくて済みます。

 

ひとつだけ、お願いがあります

ご負担いただく以上、こちらから高いものを選ばないでください。

お客様と同じものか、それより控えめなもの。
それだけで、この取り決めは気持ちよく続きます。

誰かにご馳走になる時には、その人が何を注文するか見てから、値段を考えて注文しますよね?
このような常識的な判断で良いのです。

8. 相手が施設・事業所のときは、明細を求められます

実際にあった相談から書きます。

これまで個人のお客様には、「サービス料金+交通費」をまとめたパック料金で領収書を出しておられた方の話です。

その方が、はじめて障害者施設からの依頼を受けました。

そこで、こう言われたそうです。

領収書に、明細も載せてほしい

個人のご家族なら、パック料金で通ります。

けれど、施設や事業所には経理があります。中身の分からない請求は、通りません。

 

ここで、危ない書き方をしてしまいます

言われたとおりに明細を作ろうとすると、多くの方が「送迎費」と書いてしまいます。

それをやると、この記事の2章に逆戻りです。

移動そのものに値段を付けたことになります。

 

施設の方も、そこまでは知りません

ここは誤解しないでください。

施設の方は、意地悪で言っているのではありません。

ここまでの事情を知らずに、気軽に「明細を」とおっしゃっているだけです。

相手が求めていることと、法律の線は別です。

だから、法律に触れない書き方は、こちらで用意します。

 

覚えるのは、2行だけです

移動にかかったお金は、実費。
移動している時間は、介護サービスの時給。

これだけです。

ガソリン代・高速代・駐車場代は実費として受け取る。

車に乗っている時間は、介護のサービスを提供している時間として時給でいただく。

 

だから、遠くても断らなくていいのです

片道40分かかる依頼が来たとします。

「遠いから割に合わない」と思って断る必要はありません。

送迎にかかる時間を、時給でいただけばいいだけです。

「出張料」や「送迎費」という項目を、新しく作る必要はありません。

 

明細に書くなら、この形です

介護サービス料 ◯時間 × ◯◯◯円
交通費(ガソリン実費分) ◯◯◯円

これで、先方の経理は通ります。

そして「送迎費」「送迎料」という行は、作りません。

 

あわせて、1kmあたりの単価も確認してください

同じ方から、こういうお話もありました。

私、計算方法を間違えており、1キロ30円でもらっていたので、ここもすぐに変更しないといけないですね。
実費を超えてしまい、利益が出たらいけませんよね。

そのとおりです。

実費を超えた瞬間に、それは実費ではなくなります。

では、いくらが正しいのか。

相場ではありません。あなたの車の燃費で決まります。

ガソリン単価(円/L)÷ あなたの車の燃費(km/L)= 1kmあたりの金額

たとえば1リットル170円で、燃費が10km/Lなら、1kmあたり17円です。

燃費が7km/Lの車なら、24円ほどになります。

3章の計算式に戻って、ご自分の車で計算し直してみてください。

「みんな30円だから」で決めていると、実費を超えてしまいます。

 

まとめ

  • 通達は「通院や買物等に同行する支援」を、許可の要らない例として名指ししている。サービス自体が有料でも構わない
  • 実費に「前後の回送を含む」と明記。迎えに行く分・帰る分のガソリン代も実費です
  • 実費の中身は燃料代・道路通行料・駐車場料金など。自分の車の自賠責・任意保険は対象外
  • 「送迎料」という行は作らない。移動そのものに値段を付けない
  • 計算式は走行距離 ÷ 燃費 × ガソリン単価。「1kmあたり◯円」で決めてもよいと通達にある
  • 事業所の1km10円は、ガソリン代にも届いていない金額です
  • 距離は1日の総走行距離でまとめる。乗せた区間と乗せていない区間を分けない
  • 移動時間は、料金ではなく時給の側で見る
  • 実費は相手に直接払っていただく。自分が立て替えて請求すると、売上が膨らんで税金が増えます
  • 領収書は「交通費込み」でまとめてよい。帳簿の中では分ける
  • 金額と計算方法は先に書面にして渡す
  • 同行中の食事代・お茶代は、全額お客様にご負担いただく。事業所にいたときと逆になります。契約の紙に先に書いておけば、その場で言わずに済みます
  • 相手が施設・事業所なら、明細を求められる。覚えるのは2行。移動にかかったお金は実費、移動している時間は介護サービスの時給。「送迎費」の行は作らない

事業所にいたころは、ガソリン代の金額は交渉するものでした。
「規程でこうなっているので」と言われて、それ以上は進まなかったと思います。

個人で仕事を受けるということは、それを自分で決められるようになるということです。
しかも、決めるための根拠は国が示してくれています。
あとは、それを紙にして先に渡すだけです。

 

【付録】更に詳しく知りたい方へ(通達の原文解説)

ここから先は、根拠の文章そのものを読んでおきたい方のための部分です。

自動車保険の内容について問合せするテンプレートも付けましたので、ぜひご覧ください。

なお、引用しているのは、国土交通省の「道路運送法における許可又は登録を要しない運送に関するガイドライン」(令和6年3月1日 国自旅第359号/令和8年6月5日一部改正)です。

役所の文章なので硬いのですが、読めば読むほど、こちらの仕事が想定されていることが分かります。

原文と、それが現場では何を意味するのかを並べていきます。

原文① 実費として受け取ってよいもの

② 利用者からの給付が、実費相当分の場合
[判断の考え方] ・運送行為が無償で行われる場合においても、ガソリン代等の「実費」を受け取ることは許される。この場合には許可又は登録は不要である。

・「実費」とは、運送(前後の回送を含む。)に必要なガソリン等の燃料代、道路通行料、駐車場料金、保険料(※)、当該運送を行うために発生した車両借料(レンタカー代)をいう。
※保険料とは、以下の保険に関する保険料を指す。

・ボランティア団体・NPO等による、一回あたり、又は一日あたりの無償運送行為を対象に提供されている保険(当該保険が、年間契約による場合を含む。)。
ただし、当該車両にもともと掛けられている自賠責保険・任意保険は対象外。

・レンタカーの借り受けに伴って加入する一時的な保険(免責補償制度(CDW)及び休業補償(NOC))。

ここで多くの方が引っかかるところ

最後の「※保険料」の部分を読むと、こう思われるはずです。

「1日単位の保険に入らないといけないのだろうか」
結論から言うと、その必要はありません。そして、入りたくても入れません。

順に説明します。

Q1. この「保険料」は、自分が入るべき保険のことですか?

いいえ。あなたが入る保険の話ではありません。
ここは「利用者から受け取ってよい実費に、何を含めてよいか」を並べているだけの箇所です。

保険への加入を求めている文章ではありません。
そして並んでいるのは、ボランティア団体・NPOが入る保険です。

代表的なものが、全国社会福祉協議会の送迎サービス補償です。
ただしこの保険は「ご加入いただくには、社会福祉協議会への登録が必要です」とされています。

ボランティア活動保険も同じく、社協に登録したボランティアが対象です。

有償で仕事を受けているフリー介護士が、そのまま入れる保険ではありません。

さらにこの箇所には、はっきりこう書かれています。

ただし、当該車両にもともと掛けられている自賠責保険・任意保険は対象外。

つまり、あなたが今払っている自動車保険の保険料は、利用者に請求できません。
実費として受け取れるのは、ガソリン代・道路通行料・駐車場料金までです。

Q2. では、自分の任意保険は、利用者を乗せているときに使えますか?

ここは2つの質問が混ざりやすいところです。
先に分けます。

  • 問A:利用者がけがをしたとき、そもそも保険から払われる仕組みになっているのか
  • 問B:自分の契約が、いざというときちゃんと働くのか

心配すべきなのは、Bのほうです。
Aは仕組みの話なので、はっきりしています。

問Aの答え:利用者は、補償の対象です

自動車保険は1つの塊ではなく、いくつかの補償の組み合わせでできています。
人のけがに関係するのは、主に2つです。

  • 対人賠償……あなたが「他人」にけがをさせたとき、その方に払う賠償金を肩代わりするもの
  • 人身傷害・搭乗者傷害……あなたの車に乗っている人がけがをしたときに出るもの

けがをした人ごとに、こうなります。

事故でけがをした人 対人賠償 人身傷害・搭乗者傷害
利用者(仕事の相手) 対象になる 対象になる
あなたの家族(父母・配偶者・子) 対象外 対象になる
あなた自身(運転者) 対象外 対象になる

※人身傷害・搭乗者傷害は、契約に付けている場合です。

対人賠償から外れるのは、あなた自身と、父母・配偶者・子です。
自分や家族に対して自分が賠償金を払う、という関係が成り立たないからです。

利用者は、この「他人」に入ります。
仕事の相手だから外れる、ということではありません。

そして自賠責保険もあります。
国土交通省によると限度額はけが120万円・死亡3,000万円・後遺障害は最高4,000万円で、同乗者も対象です。
ただし、これで足りる事故は多くありません。

任意保険が働くことが前提になります。

問Bの答え:確かめることは2つだけ

契約が働くかどうかに関わるのは、次の2つです。
この2つは、性質がまったく違います。

どういう問題か やること
①使用目的
仕事で車を使う頻度の申告
物差しがある問題。
基準が決まっているので、当てはめれば答えが出る
基準に照らして確認し、違っていれば変更する
②有償運送にあたるか
お金をもらって人を乗せること
物差しがない問題。
保険会社ごとの判断になる
先に聞いて、回答を残しておく

多くの方が心配されるのはだと思います。
「お金をもらって人を乗せる」というほうが、いかにも引っかかりそうに見えるからです。

ところが実際に事故のとき問題になりやすいのは①のほうです。
しかも①には、はっきりした基準があります。

難しい判断ではなく、知らないまま放置されているだけのことが多い項目です。

順に見ていきます。

①使用目的:判定の基準は「月15日以上」です

自動車保険には使用目的という欄があり、3つに分かれています。

  • 日常・レジャー使用
  • 通勤・通学使用
  • 業務使用

これは告知事項です。

実態と違う内容で契約していると、事故のときに保険金が支払われない、契約を解除されるということが起こり得ます。

ここで多くの方に効く話があります。
判定には基準があります。 東京海上日動はこう説明しています。

使用目的は、年間を通じて、平均「月15日以上」使用する目的により決定します。

月に15日以上その目的で使っていなければ、その使用目的にはなりません。

つまり、月に数日しか車を仕事に使わないのであれば、「日常・レジャー使用」のままで構わないということです。
変更も、保険料の値上がりも発生しません。

この基準は保険会社によって表現が違うことがあります。
自分の契約先がどう定めているかは、下の確認文でそのまま聞けます。

ただし、数える対象を間違えないでください。

数えるもの
❌ 利用者を乗せた日数 これではありません
⭕ 車を仕事に使った日数 訪問先へ車で行った日は、誰も乗せていなくても1日と数えます

週に4日、車で訪問に回っているなら、乗せる機会が年に数回でも業務使用です。

逆に、ふだんは自転車や電車で、車を出すのは月に2〜3日という方なら、そのままで構いません。

なお「業務」に無償のボランティアは含まれません。
報酬が発生する仕事が対象です。

 

②有償運送:こちらには決まった物差しがありません

自家用登録の車でも、対価を得て人を運ぶ形になると、保険の扱いが営業用になることがあります。
引き受け自体を断られる場合もあります。

ここには「月15日」のような分かりやすい基準がありません。

どこからが「対価を得て人を運んでいる」ことになるのかは、保険会社が自社の約款で判断します。
だから、自分で結論を出さずに聞くのが確実です。

ここで注意していただきたいことがあります。
役所がセーフと言っても、保険会社が同じ判断をするとは限りません。

道路運送法の判断をするのは運輸支局、保険金を払うか決めるのは保険会社です。
別の組織が、別の基準で見ます。

通達に「許可不要」と書いてあることは、保険金が出る保証にはなりません。

だからこそ、本文の結論がここでも効いてきます。

送迎料を取らず、実費にとどめ、付き添いサービスの対価だけをいただく。

この形にしておくと、保険会社に説明したときにも話が通ります。
「移動を売っているわけではない」と、そのまま言えるからです。

 

Q3. 1日だけ入れる保険を使えばよいのでは?

使えません。
ここは調べていて一番はっきりした部分でした。

コンビニやスマホで入れる1日自動車保険(ちょいのり保険など)は、自分名義の車には使えません。

対象外とされているのは、次の車です。

  • 運転者本人が所有する自動車
  • 運転者本人の配偶者が所有する自動車
  • 運転者本人が役員となっている法人が所有する自動車

これは「他人から車を借りて運転するとき」のための保険です。
自分の車で訪問する場面には、そもそも当てはまりません。

ただし、この保険が力を発揮する場面があります

私の車を運転して、病院まで連れて行ってもらえませんか

利用者ご本人の車を使う依頼です。

実際によくある形で、頼まれて戸惑う方が多いところでもあります。
この場面でこそ、1日自動車保険が使えます。
運転するのが借りた車だからです。

この保険が想定しているのは、まさにこういう状況です。

  • その日だけ、必要なときだけ加入できる
  • 保険料は1日あたり数百円から(金額は各社のサイトでご確認ください)
  • スマホやコンビニで手続きできる

「ご本人の保険が使えるのか」「ご家族に確認しないと動けない」——そこで止まらずに済みます。

自分の側で用意できる、というのが大きいところです。
ただし、申し込む前に1点だけ確認してください。

仕事として運転する場合に加入できるかどうかは、商品ごとに条件が異なります。
加入前に、その保険の条件を確かめてください。

なお、利用者ご本人の車を運転する場合は、道路運送法の扱いも自分の車とはまったく変わります。

実はそちらのほうが、許可の話はすっきりします。
この点は分量があるので、稿を改めてまとめます。

 

保険料は、どれくらい上がりますか

これが一番気になるところだと思います。

保険料は業務使用 > 通勤・通学使用 > 日常・レジャー使用の順に高くなります。

ただし差額は保険会社と契約条件でまったく違うので、ここに金額は書けません。

書けない代わりに、聞き方を用意しました。

下の文章をそのまま使えば、5分で自分の金額が分かります。
そして先ほどの「月15日」を思い出してください。

多くの方は、そもそも変更が要りません。
まず聞いてみる価値があります。

そのまま使える、保険会社への確認文

保険証券を手元に置いて、契約している保険会社か代理店に連絡します。

電話が気重なら、この文章をそのままウェブの問い合わせフォームに貼ってください。
むしろ回答が文字で残るぶん、そのほうが確実です。

自動車保険の使用目的と補償範囲について確認させてください。
証券番号は【     】です。

私は個人事業主として、高齢者の方の通院や買い物に付き添う仕事をしています。
自分の車で利用者さんのご自宅へ伺い、付き添いの一環として、利用者さんを車に乗せて移動することがあります。

送迎そのものの料金はいただいておらず、付き添いの料金だけをいただいています。
ガソリン代などの実費を別にいただくことはあります。

この前提で、4点うかがいます。
1. 車を仕事に使う日数は、月におよそ【  】日です。この場合、使用目的は「日常・レジャー使用」と「業務使用」のどちらになりますか。
2. 現在の契約の使用目的は「【     】」です。このままで問題ありませんか。変更が必要な場合、保険料は年間でいくら変わりますか。変更後の金額を教えてください。
3. 仕事の相手である利用者さんを車に乗せているときに事故を起こし、その方がけがをした場合、対人賠償の対象になりますか。また、人身傷害保険・搭乗者傷害保険は現在の契約に付いていますか。
4. 送迎の料金はいただかず実費のみを受け取るこの形は、「有償で人を運ぶ」ものとして、契約上の制限や免責にあたりますか。

お手数ですが、回答をメールなど文字の形でいただけると助かります。

返ってきた答えの読み方

言われたこと どうするか
「日常・レジャー使用のままで結構です」 何もしなくて構いません。回答だけ保存しておく
「業務使用への変更が必要です」 2で聞いた差額を見て決める。
金額が分かれば、あとは判断するだけです
「その形は引き受けられません」 1社の答えが全社の答えではありません。
同じ4点で他社にも聞いてみてください

最後に3つだけ

  1. 回答は必ず文字で残す。
    電話口の「大丈夫ですよ」は、事故のときに出てきません
  2. 保険は商品ごとに条件が違います。
    ここに書いたのは一般的な考え方で、あなたの契約がどうなっているかは、契約先にしか答えられません
  3. フリー介護士が入る賠償責任保険は、自動車事故を対象にしていないのが普通です。別のものとして考えてください

「たぶん大丈夫」を何年も続けるより、5分聞いて「大丈夫です」を文字で持っておくほうが、ずっと安く済みます。
しかも聞いた結果、そのままで問題ないと言われる可能性のほうが高いはずです。
その場合は何も変わらず、記録だけが手元に残ります。

原文② 買い物や通院への同行は、許可が要らない

③ 生活支援サービスなどとの一体運送
・通院や買物等に同行する支援、子供の送り届けなどが含まれる「子供の見守り支援」など、提供するサービスに人の運送が付随して行われるものについては、当該サービス自体が有料であったとしても、当該運送に特定した反対給付がない限り、許可又は登録は不要である。
なお、生活支援サービスと称していても、提供されるサービスの実態が目的地への運送のみである場合には、許可又は登録を要する。

Q4. 買い物に同行するのに自家用車を使い、移動に対して請求しない。これなら許可も登録も要らない、という理解で正しいですか?

正しいです。
その通りの内容が、この条文に書かれています。

ただし、成り立つには3つの条件があります。ひとつずつ確かめてください。

条件1:サービスの実体があること
「通院や買物等に同行する支援」と書かれています。同行して、支えて、必要なことをする。その中に移動が含まれている形です。
やっていることが送り迎えだけになっていると、条文の後半に引っかかります。「実態が目的地への運送のみである場合には、許可又は登録を要する」——ここです。

条件2:移動に特定した対価がないこと
「当該運送に特定した反対給付がない限り」という部分です。 料金表に「送迎料」の行を作らない。これが実務上の答えになります。

条件3:受け取るのは実費まで
ガソリン代・道路通行料・駐車場料金。ここを超えて「移動分の上乗せ」を取り始めると、実質的に運送の対価になります。

「交通費を別にいただく」のは問題ないのですか?

問題ありません。

同じ通達の別の箇所(Ⅱ2)に、こう整理されています。
送迎を使うかどうかで利用料に差を設ける場合でも、その差額が実費の範囲内であれば、許可も登録も不要です。

そのうえで、こう添えられています。

利用料と運送サービスの実費相当額負担分を明確に分け、必要に応じ利用者等に説明できるようにしておくことが望ましい

本文の6章で「書面にして渡す」と書いたのは、まさにこれです。
通達も、分けて説明できるようにしておくことを勧めています。

迷ったときの3つの問い

自分の仕事がどちら側かを確かめる問いです。

問い 許可が要らない側 許可が要る側
この仕事で売っているものは何か 付き添い・支援 移動そのもの
料金は、車を出すかどうかで変わるか 変わらない
または実費の差だけ
移動の分だけ上乗せがある
受け取る額は実費を超えるか 超えない 超える

3つとも左側なら、通達が言う「付随して生じる運送」です。

 

最後に、通達自身の但し書き

ガイドラインの冒頭には、こう書かれています。

最終的には、それぞれの事案に則して個別に総合的な判断を行うことが必要である

この文章は、あなたの案件を保証するものではありません。

ただ、同じ冒頭にはこうも書かれています。

無償運送行為が本来は自由に行えるものであり、一般の方々が「許可又は登録」をせずに行える運送行為を安心して行えるよう記述したものである

止めるための文書ではなく、安心して動けるようにするための文書だと、国のほうが書いています。
形を整えて、紙にして、進めてください。

自分の車を出して利用者を乗せること自体が心配な方は、自家用車での送迎と白タクの線引きを先にお読みください。

料金の決め方も含めて、フリー介護士として仕事を受けるときに何をどの順番で決めればよいのか。
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料金表そのものの作り方は、noteに書きました

この記事では、請求してよい理由と、その根拠を書きました。
ただ、実際に料金表を1枚つくろうとすると、もう少し細かい判断が必要になります。

そちらはnoteの有料記事にまとめました。

この記事に書いていないこと

  • 料金表に「交通費」という行を書いてはいけない理由と、書き換えた文面
  • 「1日最大料金」と書くと、何を約束したことになるか
  • 迎えに行く30分をどう扱うか。往復1時間かけて1時間のサービスで、採算は合うのか
  • 駐車場代を値切ってはいけない理由
  • お二人分を頼まれたときの料金。交通費はどうなるのか

「交通費は0円」と料金表に書いていた方の話から始めています。
白タクが怖くて、無料にしていた方です。

先にお伝えしておきます

通達の根拠・計算式・税金・保険の話は、noteにも入っています。
この記事ですでにお読みいただいた内容です。

この記事だけでも十分だと思いますが、さらに知りたい方はこちらもご覧ください。
「交通費は0円」にしなくていいーフリーランス介護士が知るべき白タク・実費・料金表の正解(note)

フリー介護士養成講座の受講生さんは無料で差し上げますので、ご連絡ください。

 

 

出典

この記事は2026年8月時点の情報にもとづく一般的な内容です。上記ガイドラインは「最終的には、それぞれの事案に則して個別に総合的な判断を行うことが必要」としており、個別の判断は管轄の運輸支局が行います。判断に迷う形でお受けになる場合は、事前にご相談ください。なお、このガイドラインにより「介護輸送に係る法的取扱いについて」(平成18年9月通知)は廃止されています。税務の取り扱いも状況によって異なりますので、個別の判断が必要な場合は税理士等の専門家にご相談ください。保険については、補償内容・加入条件が商品ごとに異なります。付録に書いたのは一般的な考え方であり、ご自身の契約がどうなっているかは、必ず契約先の保険会社・代理店にご確認ください。記事中の「中西さん」は仮名です。ガソリン価格・燃費は計算例として置いた数値です。

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