フリー介護士

介護美容のメニューと値段のつけ方|施術ごとの単価を並べてはいけない理由

ペンと白紙のノート フリー介護士

「介護美容の値段って、いくらにすればいいんでしょうか」

決められないまま、何ヶ月も止まっている方がいらっしゃいます。

相場を調べれば決まると思って、検索された方も多いと思います。
実際に出てくる数字を並べてみます。

  • ネイルケア 3,300円
  • 施設訪問 通常メニュー 3,300円/名
  • 30分 7,000円前後
  • ネイルカラー 3,500円/爪磨き 2,000円

この数字を見て、決まりましたか?

たぶん、余計に分からなくなったと思います。

理由があります。
値段は、相場では決まりません。

「何を売るか」が決まっていないから、値段が決まらないのです。

本稿は、介護のお仕事をされている方に向けた記事です。サービスを受けたいご家族向けではありませんのでご注意ください。

1. まず、メニューの並べ方を変えてください

値段の話の前に、メニューの話をさせてください。
ここが決まらないと、値段は永遠に決まりません。

私が受講生の方に、必ずお伝えしていることがあります。

「ネイルいくら、フットマッサージいくら」という書き方は、しないでください。

理由が2つあります。

理由1|法律の線が、全部かかってきます

施術ごとの単価を並べると、あなたは施術を「業」(なりわい)として売っていることになります。

介護美容には、関係する法律が3つあります。
美容師法、あん摩マッサージ指圧師法、医師法です。

単価表を作った瞬間に、この3本が全部かかってきます。
3本の線がどこにあるのか、そして3本とも越えずに済む形は、別の記事にまとめました。
そちらを先に読んでいただくと、この記事の話が早く入ります。

理由2|比べられる相手ができてしまいます

こちらは、商売としての話です。

「ネイルケア 3,300円」と書いた瞬間に、他所の3,300円と並びます。
同じものを売っていることになるからです。

そうなると、勝ち方は1つしかありません。
安くすることです。

これは、いちばんやってはいけない道です。

訪問には移動の時間がかかります。
1日に何人も回れません。
安くした瞬間に、事業として続かなくなります。

代わりに「訪問1回・時間単位」で決めます

おすすめしているのは、この形です。

訪問1回・60分 いくら

売っているのは、訪問1回の時間です。
その中で、手を整える時間もあれば、髪を整える時間もある。お話をうかがう時間もある。

その方に何が必要かで、中身が変わります。
だから、比べる相手がいません。

2. メニューに並べるのは、施術名ではありません

では、メニュー表には何を書くのか。

静岡県で活動されている受講生の方のメニューには、こういうものが並んでいます。

・お話をうかがいます
・身のまわりを整えます
・お食事をお作りします
・お買い物に行ってきます
・ご家族のご相談の時間もお取りします

お食事とお買い物が入っています。
美容ではありません。生活の困りごとです。

その方は「介護サポート付き訪問美容ケア」という名前でお仕事をされています。
美容だけを、切り離していません。

足すときは「プラス500円」で足します

訪問したときに、つい手伝ってしまうことがあると思います。

ゴミを出す。洗い物をする。少し片づける。
そういうものを、プラス500円としてメニューに書いておいてください。

書いておかないと、無料でやることになります。
そして無料でやったことは、次から断れなくなります。

補足)500円はあくまでも一例です。
1,000円でも1万円でも、価値に見合った金額をつけてくださいね。

 

メニュー表は、選ばせるためのものではありません

ここは意外に思われるかもしれません。

メニュー表は、問い合わせのきっかけをつくる紙です。

大きい字で、こう書いておく。

お料理をお作りできます
お買い物は代わりに行ってきます

それを見て「あ、これ頼めるんだ」と気づいてもらう。
そこから会話が始まります。

選ばせる紙ではなく、思い出してもらう紙です。

そして、メニューの前に文章が要ります

これがいちばん抜けやすいところです。

いきなりメニュー表を見せても、頭に入りません。

「介護相談できます」と書いてあっても、読む側は何を相談していいのか分かりません。

メニューにたどり着くまでに、順を追って理解できる文章が要ります。

  • いま、どんなことで困っておられますか
  • それは、こういうことが起きているからです
  • だから、こういうお手伝いができます
  • (ここでメニュー)

メニューは、まとめとしては正しい。
けれど、仕事の入口にはなりません。

 

3. では、いくらにするか

ここまで決まって、やっと値段の話になります。

相場は「情報」として見ます。従う必要はありません

冒頭に並べた数字は、調べれば出てきます。
知っておくのは悪いことではありません。

ただ、あれは「施術ごとの単価」の相場です。

あなたが売っているのは訪問1回の時間なので、そもそも同じものではありません。

 

相場に、自分の価値を足します

考え方はこうです。

相場としてはこのくらい。
そこに、自分が加えているものがあるなら、価格は上がる。

あなたが加えているものは何でしょうか。

介護の現場を知っていること。
急な体調の変化に気づけること。
ご家族の不安に答えられること。

美容だけの方には、できないことです。

やってみてから、決めていいです

最初から正解を出そうとしなくて大丈夫です。
やってみないと、どれくらい大変かが分かりません。

実際にやってみて、そこから最終的な値段を決めていけばいい。

「大変だ」と感じたら、それは値上げのサインです

ここは、覚えておいてください。

「これ、めちゃくちゃ大変だな」と感じたなら、値段を上げてください。

理由は単純です。
大変だということは、それだけお客さまから見て価値がある、ということだからです。

自分がつらいから上げるのではありません。

価値があるから上げるのです。
喜ばれるから、見合う価格に上げても良いのです。

 

4. 最初のお客さんの値段は、上げなくていいです

値上げを考えるとき、必ず引っかかるところがあります。

「最初からお願いしてくれている人の値段も、上げないといけないのか?」

私の答え:上げなくていいですよ!

新しくチラシを作って、そこに1万円と書いたとします。
それでも、こう言えばいいだけです。

◯◯さんは最初からお願いしてくださっているので、今までのお値段のままです

そこは、縛られない方がいいです。

その方は、あなたがまだ何も実績がないときに頼んでくれた方です。
経験を踏ませてくれた方です。

値上げは、これからの新しいお客さまからで構いません。

 

それでも、値上げは言い出しにくいものです

据え置きでいいと分かっても、新しい値段を出すこと自体が、こわいと思います。

「高いと思われないだろうか」
「来てもらえなくなったら、どうしよう」

先にお伝えします。

値上げをする前から、お客さまがいなくなったらどうしようと考えても、意味がありません。

いま忙しいのなら、それは事実として、必要とされているということです。

お客さまが増えているときに値上げをしないと、いつまでもできません。

減ってから上げるほうが、ずっと難しくなります。

 

言い方は、これで十分です

私が受講生の方にお伝えしているのは、こういう形です。

1回1,000円、上げさせてください。
その代わり、今までどおり一生懸命やらせていただきます

上げるものと、変わらないものを、両方置いています。

金額は上がるけれど、姿勢は変わらない。

これなら、言うほうも、聞くほうも、気持ちが悪くありません。

 

理由を並べ立てる必要もありません。

にんじんも、大根も、お米も、値上がりしています。
それは、お客さまもご存じです。

 

紙は、立派でなくて大丈夫です

「値上げのお知らせ」を作らなければ、と身構える方がいらっしゃいます。

検索すると、会社が取引先に出すような文例がたくさん出てきます。

あれは、要りません。

個人でされているなら、いまの料金表に、赤ペンで上から書き直すだけで十分です。

立派な紙を作ろうとして何ヶ月も先延ばしになるほうが、よほど損です。

 

1,000円は、思っているより大きいです

「たった1,000円のために言い出すのも」と思われるかもしれません。

1回1,000円は、1回だけの話ではありません。

月に2回来られる方が5人いらっしゃれば、それだけで月に10,000円です。
1年で12万円になります。

金額を上げるのが難しいのではありません。
1回、口に出すのが難しいだけです。

そして、その1回は、日にちを決めた瞬間に終わります。

「◯月1日から」と決めてください。
それで、話は半分終わっています。

高齢者と介護士の手

5. 無料やモニターから始めるときの、たった1つの注意

最初は自信がないので、無料や格安から始めたくなると思います。
それ自体は、問題ありません。

ただし、1つだけ守ってください。

「次はいくらです」が言えないと、ずっともらえなくなります

1回目が無料でも、その場で「次からはいくらです」と言えているかどうか。
ここだけです。

言えていないと、2回目も無料になります。3回目も無料になります。

そして、途中から有料にするのは、ものすごく言い出しにくくなります。

価格を言い出せずに、ずっと我慢して続けると、結局はやめることになります。

考えて欲しいのです。
あなたが辞めて困るのは、利用者さん、あなたのお客様ではないですか?

 

だから、はじめから匂わせておきます

言い方は、こんな形で十分です。

今回はテストとしてやらせていただきます
モニターとして受けていただけませんか
今回は特別に無料ですが、次回からは正規のお値段になります

「今回は特別だ」と分かる形にしておくことです。

 

安くするなら、定価を出したうえで安くします

値引きをするときも、同じ考え方です。

先に定価を見せてください。
そのうえで「今回は特別にこの金額で」と言う。

最初から安い値段しか見せないと、それがあなたの定価になります。

こうしておけば、いつでも定価に戻せますよね?

 

6. 細かいところを2つだけ

最後に、実務の話を2つ。

「税込み」と書いておけば進みます

料金表に金額を書くとき、消費税をどうするか迷われると思います。

金額のうしろに(税込み)と書いておけば、それで進みます。

税抜き表示にすると、お客さまが最終的にいくら払うのか分からなくなります。

個人のお客さま相手なら、税込みが親切です。

 

消費税は、しばらく考えなくて大丈夫です

国税庁の説明には、こう書かれています。

課税期間の基準期間における課税売上高が1,000万円以下である場合には、原則として、納税義務が免除されます

1,000万円です。
始めたばかりの段階で気にする数字ではありません。そこに届いてから考えれば十分です。

ただし、1つだけ例外があります。
インボイス(適格請求書発行事業者)の登録を受けている場合は、売上が1,000万円以下でも納税義務は免除されません。

個人のお客さまからの依頼だけなら、インボイスを求められることはまずありません。

ただ、施設や事業所と契約する場合は、相手から求められることがあります。

登録するかどうかは、そのときに考えれば大丈夫です。
先に登録する必要はありません。

 

7. まとめ

  • 値段が決まらないのは、相場を知らないからではありません。
    「何を売るか」が決まっていないからです
  • 施術ごとの単価を並べない。
    法律の線が全部かかってきますし、他所と比べられます
  • 訪問1回・時間単位で決める。
    中身がその方に合わせて変わるので、比べる相手がいません
  • メニューに並べるのは、生活の困りごと。
    お食事、お買い物、ご家族の相談の時間
  • つい手伝うことは「プラス500円」(例)で書いておく。
    無料でやったことは、次から断れません
  • メニュー表は選ばせる紙ではなく、思い出してもらう紙。
    その前に、順を追って読める文章が要ります
  • 相場は「参考情報」として見る。
    そこに自分が加えているものがあれば、価格は上がります
  • 「大変だ」と感じたら値上げのサイン。
    大変なぶん、価値があるということです
  • 最初のお客さんは据え置きでいい。
    値上げは新しい方からで構いません
  • 値上げの言い方は「1,000円上げさせてください。その代わり、今までどおり一生懸命やらせていただきます」。
    立派なお知らせは要りません。料金表に赤ペンで十分です。難しいのは金額ではなく、1回口に出すこと。日にちを決めれば終わります
  • 無料で始めるなら「次はいくらです」を必ず言う。
    言えないと、ずっともらえなくなります

値段が決められないのは、あなたが優柔不断だからではありません。

売るものが決まっていないだけです。
メニューが決まれば、値段は決まります。

なお、訪問にかかる交通費・ガソリン代をどう決めて、どう請求するかは、別の記事で法令の根拠まで含めて整理しています。

実費は施術料金と分けて考えてください。
資格を取ったのに仕事にならない理由も、あわせてお読みいただくと全体像がつかめます。
価格・集客・サービスの輪郭の3つです。

「介護と美容を分けない」という働き方について、順を追ってお伝えしています。
その答えと、実際に活動している受講生の声、講座の内容と料金まで、1ページにまとめてあります。
フリー介護士とは?|介護保険の枠を超える新しい働き方

 


出典

この記事は2026年8月時点の情報にもとづく一般的な内容です。記事中の金額は、公開されている事業者の料金表を参考にした目安であり、特定の事業者の価格を推奨するものではありません。消費税の取り扱いやインボイス制度の登録については、所轄の税務署または税理士にご確認ください。記事中の事例は、ご本人の了解を得たうえで、内容を一般化して記載しています。

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