「いくらで、がいちばんわからないです」
7日間のメール講座に、ある読者の方からいただいたお返事です。
この方は、メール講座に登録された24分後に、1日目のワークを書いて送ってこられました。
そのあとも2日目、3日目と、4回続けてお返事をくださいました。
グループホームでお勤めの方です。
サービス付き高齢者向け住宅のご経験もあり、入浴介助にも入っておられます。
4回のお返事を並べてみて、気づいたことがありました。
質問が出てきた順番が、そのまま、仕事づくりでつまずく順番になっていたのです。
ひとつ解けると、次が出てくる。
そして次の疑問も、多くの方が同じところで止まります。
この記事では、4つの質問に、出てきた順番でお答えします。
今のお仕事を続けたまま、自分の仕事を持ちたいと考えておられる方に向けて書きました。
第1章:「業務に追われて、ゆっくり話を聞けません」のは、努力が足りないからではありません
1日目のワークは、こういうものです。
施設の中では十分にできなかったけれど、本当はもっとしてあげたかったこと。
それを思い出して、書き出してみてください、というワークです。
この方が書いてこられたのは、3つでした。
話をゆっくり聞いた。
散歩の付き添いをした。
入浴のときに、こだわりのある方の希望に応えた。
そして2日目、この3つの中から「ゆっくり話を聞く」を選ばれ、こう書き添えてこられました。
「施設では業務に追われ難しいです」
まず、はっきりお伝えしたいことがあります。
業務に追われてできないのは、ご本人の努力が足りないからではありません。
決められた時間と人数で、たくさんの方を安全に支えるために、施設はそういう仕組みになっています。
一人の方のそばに長くいれば、別の方のところへ行けなくなります。
仕組みの話であって、人の話ではありません。
むしろ、逆のことが言えます。
「難しい」と感じるということは、やりたいことがはっきりしているということです。
何をしたいのか分からない方は、難しいとも感じません。
ここが出発点になります。
自分のペースで働くという考え方については、こちらの記事でも書いています。
第2章:「ゆっくり話を聞きます」だけでは、頼む側が頼めません
ここが、2つ目のつまずきです。
やりたいことが決まったので、次は仕事の形にする番です。
ところが、多くの方がここで止まります。
「話を聞く」「寄り添う」という言葉は、そのままでは頼めません。
頼む側が、何をどう頼めばいいのか分からないからです。
そして、もうひとつ大事なことがあります。
お金を払うのは、多くの場合、離れて暮らすご家族です。
ご本人が喜ぶかどうかも大切ですが、お金を出す方が本当に欲しいものは別にあります。
ご家族が欲しいのは「安心」です。
ですから、用件のある形に変えます。
この方には、3つの形をお伝えしました。
形その1:月に2回の見守り訪問
ご家族に代わって、月に2回うかがって、1時間から2時間、ゆっくりお話を聞く。
そして帰ったあとに、短い報告をご家族に送ります。
今日はこんなお話をされていました。
お食事はこんな様子でした。
ご家族は、様子が分かって安心します。
ご本人は、話を聞いてもらえてうれしい。
「ゆっくり話を聞く」が、そのまま商品になります。
形その2:面会の代行・付き添い
施設や病院に入っておられる方のところへ、ご家族が行けない日にうかがう。
面会の代行も、やっていることは「ゆっくり話を聞く」ことです。
ご家族には、その日の様子をお伝えします。
形その3:通院の付き添いの中に、話を聞く時間を入れる
通院の付き添いは、頼む側にとって分かりやすい用件です。
その待ち時間に、ゆっくりお話を聞く。
「付き添い」で頼んでいただいて、中身はご自分がやりたかったことになります。
3つの形に共通していることがあります。
どの形も、今のお仕事を続けたまま、月に1件、2件から始められます。
辞めてから始めることではありません。
介護保険の外で個人として仕事を始めるときの全体像は、こちらの記事にまとめています。
お勤めを続けながら始める場合は、勤務先の就業規則を必ず確認してください。
就業規則の読み方は、別の記事で詳しく書いています。
第3章:「ひとつの現場しか知りません」は、弱点ではありません
3つ目のつまずきは、ご自分の経験についての不安でした。
この方は、どんな現場でお仕事をされているかを教えてくださったとき、こう書き添えてこられました。
有料老人ホーム、特別養護老人ホーム、老人保健施設、デイサービス、訪問介護は経験がありません。
ご経験のないところまで、わざわざ書いてくださったのです。
ここで申し上げたいことが、3つあります。
グループホームの経験は、そのまま強みになります
グループホームは、少ない人数の方と長い時間をともに過ごす場所です。
認知症のある方のペースに合わせて、急がずにそばにいる。
言葉にすると簡単そうですが、経験のない方には、なかなかできません。
施設の中での動き方が分かっている人は、施設から信頼されます
面会の代行でうかがったときに、職員さんにどう声をかけるか。
どこまでならお願いしてよくて、どこからは控えるか。
ご家族の代わりに施設へうかがう仕事で、施設の側がいちばん安心されるのは、施設で働いた経験のある人です。
中にいた人にしかない強みです。
面会の代行は、体に触れる介助をしません
ですから、訪問介護のご経験がなくても始められます。
やることは、会いに行って、お話を聞いて、その日の様子をご家族にお伝えする。
これだけです。
サービス付き高齢者向け住宅のご経験も、同じように生きます。
サービス付き高齢者向け住宅は、お部屋がその方の住まいです。
訪問して、お部屋でゆっくりお話を聞く形は、第2章の見守り訪問とよく似ています。
そのうえで、もうひとつお伝えしておきたいことがあります。
ご家族は、施設の種類で人を選びません。
母の話を、ゆっくり聞いてくれる人かどうか。
任せて大丈夫な人かどうか。
見ておられるのは、そこだけです。
いくつの現場を知っているかよりも、おひとりの方とどう向き合えるか。
仕事になるのは、後のほうです。
年齢やご経験への不安については、こちらの記事もあわせてお読みください。
第4章:「いくらで」が分からないのは、金額を知らないからではありません
そして4つ目が、冒頭のお返事です。
3日目のメールに、こういうワークがあります。
誰に、何を、いくらで、どう届けるか。
この4つのうち、いちばん分からないのはどれですか、というワークです。
この方のお答えは「いくらで」でした。
4つの中で、いちばん多くいただくお答えです。
値段そのものは、すぐ分かります
介護保険の外で個人として動いておられる方は、多くの場合、1時間3,000円から4,000円くらいで活動されています。
調べれば出てきますし、お伝えすれば、すぐ分かります。
でも、みなさんがつまずくのは、そこではありません。
「本当に、その値段でいいのだろうか」
ここで止まります。
数字は分かっていても、自信が持てないのです。
一人で考えると、値段は下がっていきます
優しい方ほど、そうなります。
年金で暮らしておられる方が多いのに、そんなに出せるだろうか。
そう思って、自分で自分の値段を下げていきます。
けれども、安くすることが相手のためとは限りません。
安すぎる料金で受け続けると、続けられなくなります。
続けられなければ、お客様も、続けて頼めません。
値段が動きだすのは、やってみたときです
受講生のおひとりは、30分の依頼で「半額にしてください」と言われました。
そのあとで、最低利用時間を決められました。
やってみて、決まったことです。
同じように、ある地方の方は3,000円で契約が決まり、別の町の方は4,000円でうまくいっています。
同じ仕事でも、場所によって、形によって違います。
おもしろいのは、ここからです。
数字を聞いただけでは動けなかった方が、その値段で実際に動いている人を目の前にすると、自分も言えるようになります。
どう伝えて、どう決めたんですか。
そう聞ける相手がいるかどうかで、ずいぶん変わります。
一人で決めた値段は、お客様に伝えるとき、声が小さくなります。
でも、誰かが先に通った道だと分かっていると、同じ値段でも、はっきり言えます。
そして、値段の考え方の土台は、ひとつです。
値段は、こちらがかけた時間ではなく、受け取った方が何を手に入れるかで決まります。
料金の決め方をもう少し詳しく知りたい方は、料金設定についての記事をお読みください。
一人で全部判断しなくてよいという話は、こちらの記事に書いています。
なお、料金は地域やサービスの内容によって変わります。
記載した金額は、実際に活動されている方の目安であって、収入をお約束するものではありません。
第5章:4つのつまずきは、順番に並んでいます
4回のお返事を、もう一度並べてみます。
- 第1:施設では業務に追われて、やりたいことができない → 努力の話ではなく、仕組みの話。難しいと感じるのは、やりたいことがはっきりしている証拠
- 第2:やりたいことが、仕事の形にならない → 気持ちの言葉は頼めない。お金を払うご家族が欲しいのは「安心」なので、用件のある形にする
- 第3:自分の経験では足りないと思う → 現場の数ではない。施設で働いた経験こそ、施設へうかがう仕事では強みになる
- 第4:いくらでいいのか分からない → 金額が分からないのではなく、その金額でいいと言える自信のところで止まっている
4つを通して言えることが、ひとつあります。
介護のプロでも、仕事づくりは初心者です。
介護の経験があることと、その経験を自分の仕事にできることは、別のことです。
施設で働くときは、施設が利用者を集め、サービスも料金も勤務時間も決めてくれています。
自分で仕事をつくるときは、誰に、何を、いくらで、どう届けるかを、自分で考えます。
知らないのではなく、習っていないだけです。
そして、4つのどれも、今のお仕事を辞めなければ解けない問題ではありません。
続けたまま、月に1件から試せます。
介護保険の枠の外で働くという考え方の全体像は、こちらにまとめています。
この記事でお答えした4つは、7日間のメール講座で順を追ってお伝えしていることの一部です。
冒頭の読者の方も、メール講座を読みながら、1日ずつ考えを進めておられます。
毎日のメールには、小さなワークが付いています。
書いてみると、ご自分の経験の中に、もう仕事の形があることに気づかれると思います。


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